プロジェクト
早稲田大学人間科学部 武田尚子研究室の地域社会学ゼミ合宿(2泊3日)が、2021年10月に2回に分けて開催されました。
学生たちが体験した内容は「山里での暮らし体験」と「塩の道薙鎌道を歩く体験」。
ゼミ生は大学3年生。コロナ渦のため、ここ1年半の間オンライン授業が続いていたそうですが、様々な条件がクリアされ、ようやく小谷村に来てもらうことができました。その様子をご紹介します。
【体験プログラムの概要】
初日/「大網散策」「笹寿司作り」
2日目/「塩の道歩き:大網から戸土境宮・中股小倉明神へ」
3日目/「農作業体験」「体験のまとめ」
【参加学生たちの感想】
【武田先生のコメント】
学生たちは、大網のふだんの暮らしのなかに入りこみ、自分たちも同じように体験できることに新鮮さを感じ、印象に残ったようです。
食べ物についても、採ってきたり、洗ったり、いっしょに調理するなど、口に入るまでの全体のプロセスを経験できることをおもしろがっています。文字通り地産地消を実体験しているわけです。コンビニでパック入りの中食を買うのとは全く異なる「食の体験」をしていることがわかります。「笹の葉ずし」作りのような「郷土食」作りと共にこのような「地産地消のリアルな体験」も心に残る「食の体験」になることがわかります。
朝に集落のお年寄りが元農協前に新聞を取りに来る姿などを見かけ、声をかけられて、自分たちが認識されていることを喜んでいます。集落のふだんの日常生活が営まれているという舞台が重要で、「ありのままの暮らし」を実感することにつながっていると考えられます。持続可能な「里山の暮らし」の維持が重要であることがわかります。
子どもたちの無邪気なふるまいが、学生たちの「遠慮」を取り払い、「里山の暮らし」に引っ張り込むことに貢献しており、子どもたちも重要な役割を果たしていることがわかります。
人類学の概念に「トリックスター(trickster)」があります。民話や神話によく登場する2つの世界の間を自由に行き来する「いたずら者」で、幼い者や小さな動物として描かれます。秩序をこえて新しい関係を創造する役割をはたす無邪気で気まぐれな存在のことです。大網でも子どもたちが一種の「トリックスター」的機能を果たして、学生たちを「里山の暮らし」に引っ張り込むのに効果的役割を果たしていると思われます。これに対して、ゆっくり散歩している老人たちは「つつがなく回っているむらの秩序」「むらの安定」を感じさせる存在であるといえるでしょう。
大網のむらのなかでの体験は、「現代的民話」の「リアル体験」、「里の暮らしや日常の体験」という面があるといえるでしょう。
「塩の道歩き」について、眺望のすばらしさとか、薙鎌神事にまつわる神話、無人村でも神事は行われているという事実が、学びとして非常に魅力的であることも学生たちは感じています。
小谷で暮らす私たちにとっては当たり前の日常である「ありのままの里山の暮らし」が都会の学生にはとても魅力的で、その体験に大きな価値を感じてくれています。そして、小谷村には雨飾山に対する信仰や、諏訪信仰の「薙鎌の神事」のような神話の世界が、生活の一部として今も残っています。この非日常での日常の体験が、新鮮であり驚きでもあるのだと思います。
団体情報
くらして
「大網農山村体験交流施設つちのいえ」
http://kurashite.com/
399-9601 長野県北安曇郡小谷村北小谷9326
☎025-561-1023
kurashite@gmail.com